今回は、日米の法律(契約)用語での表現の差異について説明します。たとえば、「救済」という言葉のバリエーションで考えてみましょう。「救済」に対応する英語はremedyです。UCC §1-201に次のような規定があります。
“Aggrieved party” means a party entitled to resort to a remedy.
(試訳:「権利を侵害された当事者」とは救済を求める権利を有する当事者をいう。)
それでは、次の言葉は英語法律用語ではどのように表記するのでしょうか。
1)救済手段
2)救済措置
3)救済方法
日本語的表現から考え、
1)remedy measures
2)remedy proceeding
3)remedy method
などを考えられたのではないでしょうか。では、ひとつずつそれらを表記している法律や条約で見ていきましょう。
1)救済手段:remedies
日米租税条約25条1項は、
“notwithstanding the remedies provided by the national laws of the Contracting States…..”
(訳)両締約国の法令で定める救済手段とは別に…。
2)救済措置:remedies
日英通商航海条約25条(2)は、
suitable civil remedies shall be…
(訳)適当な民事上の救済措置が…。
3)救済方法:remedies
UCC§2-316(4)は、
Remedies for breach of warranty can be limited in accordance with this Article…
(訳)担保義務違反に対する救済方法は…に関する本条の規定に従ってこれを制限することができる。
つまり、上記の日本語に対する英語法律用語はすべてremediesで表現されます。
このように日米法律用語はそれぞれに独自の表現があるため、それらに惑わされ、的確な読みとりができないと用語の選択に間違いが生じることになりますので注意が必要です。上記の1)、2)、3)にはそれぞれ「手段」、「措置」、「方法」という言葉が添えられていますが、つまり、その意味は「救済」ということなのです。もちろん、その反対もあります。common lawとequityの関係もあって、英語法律用語の方が表現にバリエーションがあるケースも多くあります。たとえば、「訴訟」を表現するものにaction、suitやlawsuitなどがあることからもわかります。
(執筆:通学担当講師)