法律文化の異なりを調べているとおもしろいことに気がつきます。たとえば裁判制度です。日本は三審制度(第一審:地方裁判所、第二審:高等裁判所、第三審:最高裁判所)を採用していますが、国が変われば裁判所の構成や名称も変わることは当然です。
ところが、アメリカ合衆国のように国が変わらなくても各州で裁判所の構成や名称が異なるところがあります。それはアメリカ合衆国の州がそれぞれ独立の国家のような法的性質から構成されているからです。各州には州裁判所と連邦裁判所がありそれぞれの管轄権を有して司法判断をしています。
たとえば、supreme courtという用語に出会えば、私たちは日本の「最高裁判所」と同じと考えます。ワシントンDCにあるsupreme court of the United Stateはたしかに「連邦最高裁判所」ですが、ニューヨーク州にあるsupreme courtは日本の地方裁判所に相当する第一審裁判所のことを指します。ニューヨーク州の最高裁判所はcourt of appealといいます。では、各州の最高裁判所はすべてcourt of appealというかというとsupreme court of appealやsupreme of courtさらにはsupreme of judicial courtなどという州もあります。
つまり、私たちが翻訳するときに出会うcourtの名称は日本の裁判所の名称で訳してはならないということなのです。英文契約書を翻訳する際に覚えておいてください。
(執筆:通学担当講師)