英文契約書のNon-disclosure Agreementにおいて”protective order”という表現を見たことがあると思います。これを英米法辞典で調べると「保護命令;開示制限命令」と出ています。例文で見てみると、
“Each party may disclose any confidential information as required by governmental or judicial order provided that the party gives the other party prompt notice of such order and complies with any protective order imposed on such disclosure.”
というところに表現されています。
“provided that the party…..complies with any protective order imposed on such disclosure”は、「その開示情報に対し裁判所が命じる秘密保持命令を当該当事者が順守することを条件に」という意味です。
この「裁判所が命じる秘密保持命令」は、裁判の審理が公開の場所で行われることに関係があります。米国では知的財産権訴訟の公判で被告企業が先端技術などにかかわる情報開示は企業業績に悪影響を与えるとして開示を拒否することがあるときに、審理を非公開にして開示させ、そこで開示された秘密情報について当事者全員に秘密保持命令を出します。
日本では審理は公開(プライバシー関連の事件を除く)の場所で行ってきましたが、近く法改正をし、必要に応じ知的財産権訴訟の審理の一部(証人尋問)を非公開にすることができるようにし、さらに非公開の場で開示された情報について秘密保持命令(protective order)を出せるようにします。これに違反した場合の罰則も規定されます(平成15年10月19日付け日本経済新聞)。
英文契約書の翻訳を志す方は、日頃、新聞・雑誌の記事に注意をしておくと自分が訳す言葉の意味を正確に理解する機会があります。
(執筆:通学担当講師)