英文契約書を翻訳しているときに、the matters related to~、the matters concerned with~, the matters involved with~などの表現によく出会います。これらを訳すときに法令用語の「に係る(”かかる”と読み、”かかわる”とは読まないことに注意)事項」とするか「に関する事項」とするか戸惑うことがあります。「係る」という言葉は、独特のニュアンスをもつ法令用語として法令・規則の中でよく使われます。
「係る」が法令上最も多く使われるのは「係る」で結ばれる言葉が、より直接的な関係にある場合なのです。たとえば、「その届出に係る事項のうち」(国土利用計画法23条)、や「審査請求に係る処分があったことを知った年月日」(行政不服審査法15条)にみられる「に係る」は、「届出に関する事項」とか「審査請求に関する処分」という意味よりも、もっと直接的な関係を示します。つまり、「届出事項」、「審査請求の対象となっている処分」という意味で使用さています。一方、「に関する」はもっと幅の広い意味で使われ、「に係る」よりもつながり具合が直接的でない場合とか、もう少し漠然とした関係の場合に使われます。「に係る」のような直接的関係に使われることはありません。
では、上記のような例のときに「に係る」とするのか「に関する」と訳すのかということになりますが、その契約条項の内容から判断するしかありません。くどいようですが、「係る」は「かかる」と読んでください。
ところで、「かかる」を「かかる届出」ように「その」や「当該」と同じ意味に使用する方がいますが、このような使い方は法令上や契約条項上ではしませんので、注意してください。
(執筆:通学担当講師)