英文契約書のなかで、代理、代理人に相当する英語といえば、agent, agency, representative, proxy, attorneyなどがすぐ頭に浮かびますが、それぞれの意味にどのような違いがあり、実務上どのような場面にどの用語を選択するかということになると、ハテ?となることがあると思います。そこで、それぞれの使い方を簡単に述べてみます。
(1) Agent
agentは「本人から委任あるいは授権された代理権限の範囲内で、本人に代わって取引、契約など法律行為をなす者」といわれ、一般に個人が代理人になるときに使われます。
(2) Agency
agencyはagentと同じ意味をもつ用語として使用されますが、一般に政府機関その他の法人、団体を代理人とするときに多用されます。たとえば、防衛省の前身である防衛庁はthe Defense Agencyですし、社会保険庁はthe Social Insurance Agencyで、これらの機関は法律上政府の代理機関として位置づけられています。また、商法上の代理商(店)などもagencyを使います。
(3) Representative
representativeは代理人、代表者、担当者などに使われます。これらからわかるように、この代理人は多くの場合、身内の者が代理人、代表者になるときに使われます。具体的にはrepresentative director(代表取締役)、medical representative(医薬品会社の「医薬情報担当者」)の例がそれを示しています。その他representativeは選挙人の利益を代表する人(議員)にも使われます。
(4) Proxy
proxyは会議で議決権行使をするために指名される代理人です。その典型的な例が株主総会における株主の代理人です。このproxyは「委任状」という意味にも使われます。つまり、株主からproxyを渡され株主総会に出席するproxyということです。
(5) Attorney
attorneyは専門職業人としての代理人を意味します。米国ではattorney at lawとして「弁護士」を指します。弁護士以外の者(専門職業人でない者)にattorneyという語を使って事実行為の代理人とする場合は attorney-in-factとします。power of attorneyは「委任状」を意味しますが、proxyの「委任状」と区別されます。
(執筆:通学担当講師)