Pass through

“pass through”という言葉を目にしませんか?

今国会で審議されている会社法に規定される合同会社について、”pass through tax”ということが話題になりました。現行の税法によると、株式会社の株主(所有者)は、会社に所得があると法人所得税を支払います。さらに、配当がなされると、個人として配当所得税を払うことになり、理論的には二重課税になるといわれています。合同会社は、米国のLLC(Limited Liability Company)をモデルに、民法上の組合の性格と株式会社のそれとを兼ね備えたものとして規定されます。米国におけるLLCに対する課税は、LLCが会社組織ではないことから、LLC自体か、その構成員たるlimited partnersのどちらかが所得税を支払えばよいというように、二重に税金を課さない仕組み(pass through tax)をとっています。合同会社もLLCをモデルにしたので、この”pass through tax”の制度を設けるべきだとの声がありましたが、結局、合同会社が会社組織であることと他の法人とのバランスがとれないとの理由で財務省からNOとの結論が出されました。訳語としては「パススルー税(税制度、課税)」とせざるをえないでしょう。

翻訳をするときにカタカナ表記しか方法がないときでも、原文の意味を正確に把握してからカタカナ表記にするとしないとでは、その前後の訳文に大きな影響が出ます。高い調査能力は、英文契約書翻訳の基礎であることを意識しましょう。
(執筆:通学担当講師)