英文契約書におけるotherを訳す(その2)

次の例文は、やはり2010年度秋期の英日契約書翻訳中級講座(通学コース)で教材に使用したProperty Management Agreement(プロパティマネジメント契約書)からの引用です。

【例文2】
Manager may appoint consultants, technical advisors, brokers, depositories, and other persons acting in any other capacity deemed necessary or desirable to assist it in the provision of the Services, with the prior approval of Asset Manager, which approval shall not be unreasonably withheld or delayed.

例文2におけるconsultants, technical advisors, brokers, depositories, and other persons acting in any other capacity deemed necessary or desirable to assist it in the provision of the Servicesの部分の受講者の訳例を紹介します。

【訳例2-1】
コンサルタント、 テクニカルアドバイザー、仲立人、受託者その他の本業務提供に資するために必要または望ましいとみなされる資格で行為する者
(受講者Dさん)

【訳例2-2】
コンサルタント、技術アドバイザー、仲介業者、預金管理者、本業務を提供するにあたり当該業者を支援するために必要または望ましいとみなされるその他の資格において行動するその他の人員
(受講者Eさん)

【訳例2-3】
本業務の提供においてその補佐のために必要または望ましいと思われるコンサルタント、技術顧問、仲介業者、保管人その他異なる分野で活動する者
(受講者Fさん)

Dさんの訳は、any other capacityのotherを訳出せず、and other personsのotherを「その他の」と訳したため、 原文の意味と違うものになっています。なお、assist itの意味を正しく理解しているか疑問があります。

Eさんは、2箇所のotherを「その他の」と訳していますが、いずれもその意味が明確でありません。otherを機械的に「その他の」と訳すのではなく、文脈におけるその意味をよく考えて訳す必要があります。なお、assistの目的語itはManagerを指します。itの誤訳はほかの複数の受講者の訳にもありました。また、ほかの受講者の訳文でthe provision of the Services「本業務の提供」の誤訳「本業務の条項」が目につきました。契約書翻訳での、provisionのような多義語の訳語選択に当たっては、その語が文脈において意味をなすか否かを十分に吟味する必要があります。

Fさんは、personsの前にあるand otherを「その他」、capacityの前のotherを「異なる」と訳し分けており、構文を正しく把握していると考えられます。ただ、assist itの意味を正しく理解しているか疑問があります。

ここでは、persons acting in any other capacityの意味を正しく解釈できるか否かが鍵になります。この場合のotherは、日常用語の「ほかの」とか「他の」、すなわち「コンサルタント、・・・受託者以外の」の意味で使われており、otherを「それ以外の」とか「上記以外の」と訳したほうが分かりやすいケースです。persons acting in any other capacityの意味を正しく解釈できれば、consultants, … depositories はその例示ではないことが分かります。 したがって、法令上の用法によれば、personsの前にあるand otherの訳として、「その他の」ではなく「その他」を選択することになります。

上記の解釈に基づいて、consultants以下の部分を次のように訳すことができます。

【訳例2-4】
本業務の提供に際し支援を受けるために必要または望ましいとみなされるコンサルタント、技術顧問、仲介人、受託者その他それ以外の資格で行為する者

(執筆:西田利弘)