“Representative”は代理人?

英米法と大陸法系(日本法など)における理論、概念の違いの一つに、法人の行為に対するものがあります。一般に、法人は社会的実在であるとする説(これを法人実在説という)が有力です。法人が行為をするといっても、実際には自然人を法人の代表者(代表取締役または理事長)という法人の執行機関とし、その行為を法人自体の行為としてとらえるか、あくまでこの自然人は法人の代理人としてとらえるかの違いがあります。日本法は代表取締役制度を通じての法人実在説をとっていますが、英米法は代表取締役制度を採用せず、CEO,COOなどの執行者を法人の代理人とし、これらの代理人は法人のために行為をするととらえています。欧米企業のアニュアル・レポートなどのDirectors & Officersの欄をみても代表取締役 (representative director)というタイトルがないことからもわかります。

representativeは、本来、代理人という意味なのです。その代理人が契約締結などの法律行為をする権限を有するときに、日本語では代表者と表現しています。なお、Representative Directorは和製英語です(でも通用します)。

以上で、英文契約書の後文で” The parties hereto have caused this Agreement to be executed by their duly authorized representatives…”と使役の文型を使用していることが、おわかりと思います。なお、representativeには、代理人、代表者、担当者(官)、責任者、(代理権を付与された)従業員などの訳語があてはまることも覚えておいてください。
(執筆:宮野 準治)