I. 用語の解説
reimburse:「補償する」「弁償する」「返済する」「弁済する」「払い戻す」等々、いずれの訳も辞書に載っていて間違いではないのですが、「支払う」という訳は一番無難な訳で、覚えておくと便利な訳語です。上記のこの中から文脈に適した訳を見つけ出さなければなりません。ポイントはお金がどう動くかを考える事です。「返済」「払い戻す」だと一度受取ったものを返すという意味になってしまいます。背景をしっかり把握して訳してください。
II. 参考図書の利用について
法律用語の調べ方についてお話したいと思います。
「および」や「ならびに」、「または」や「もしくは」などは最も基本的な法律用語ですが、初めて契約書翻訳を勉強する人にとっては、この違いをどうやって調べればよいのかさえもわからないのではないでしょうか。やはり、何か教科書となるような参考書が必要だと思います。そこで、まずは宮野・飯泉両先生の「英文契約書の基礎知識」を読むことをお薦めします。もう既にお持ちの方も多いと思いますが、いわばこの通信教育のテキストのようなものですので、受講生の方は是非一読してください。
次にお薦めするのは、各社から出ている「法令(法律)用語辞典」や「法律用語の基礎知識」といった参考書です。最初に書いた「および」「ならびに」、「または」「もしくは」なども詳しく説明されています。「法」と「法律」の違いについて広辞苑で調べて説明してきた方が何人かいましたが、やはり法律用語は法律用語辞典で調べてください。
日本の法律用語を知っていても、英文契約書には日本の法律にはない英米法特有の概念が含まれることがあります。これらの概念を知る上で役に立つのが、「英米法辞典」(東京大学出版会)「英米商事法辞典」(社団法人商事法務研究会)と「Black’s Law Dictionary」です。正しい訳文を作るには英語の法律用語と日本語の法律用語の両方を知っておくことが必要です。なかなか値段の張るものもありますが、ぜひ揃えていただきたいと思います。
辞書や参考書をフル活用して、良い訳文を作ってください。
(執筆:国吉 晶二郎)