英文契約書を翻訳する場合に、辞書で調べた用語の意味がよく理解できないまま、訳文を作成することはありませんか?
Event of Default(契約不履行)条項には「あまり聞きなれない言葉がいくつか並んでいると思います。辞書や参考書で調べた訳語を書いたもののその日本語の意味がよく分からない…。」という経験をされた方もいらっしゃると思います。この中には、bankruptcy「破産」、 insolvencyは「債務超過」、「支払不能」などがあります。破産の意味は、皆様もよくご存知と思いますが、法律用語辞典には「債務者に経済的破綻の兆しがあるときに、債務者のすべての財産によって債権者に公平な満足を与える裁判上の手続き。」と記載されています。破産の申立てがあると、裁判所は、破産原因の有無を審理しますが、その破産原因には、支払不能、支払停止、債務超過の三種あります。insolvencyは、「債務超過」、「支払不能」のどちらの意味も有しますが、「債務超過」とは、資産よりも負債が多くなることであり、「支払不能」とは、「債務者がその財産・労務および信用などのあらゆる経済力をもってしても、既に弁済期が到来し、しかも支払を請求されている金銭債務の大部分を相当の期間内に支払うことのできない継続的かつ客観的状態にあることをいう。」(破産法126条1項)をいいます。支払停止とは、「債務者が債権者に対し、明示または黙示的に債務の支払ができないことを表す行為」をいいますが、その一般的なものに、「手形の不渡り」があります。
契約不履行事由には、他に「管財人が選任された場合」があります。receiverやtrusteeを管財人と訳しますが、管財人という言葉は一般にはあまりなじみがないかもしれません。次に、「管財人」についてちょっとご説明しましょう。
会社などの法人や個人が事業不振や債務超過で倒産の危機に瀕した場合、一定の法的手続き、すなわち、会社更生法や民事再生法、破産法の手続きを開始するに当たって裁判所から選任されるのが管財人です。このうち、会社更生法は、株式会社にしか適用されない(有限会社や合資会社、医療法人などや個人企業は申請できません。)のですが、この適用を受けると従前の会社代表者である代表取締役が代表権限を奪われてしまいます。そのため、再生に向けて会社を代表し、事業を執行するために管財人が必ず選任されねばならず、通常、経営の知識のある者が事業管財人として、又、弁護士など法律の専門家が法律管財人として選任されます。
前回ご説明しました民事再生法は、従前の代表権者が引き続き企業などを代表し、継続性を確保しながら再生を図るところに特徴がありますが、これが不適当と認められたときには、管財人が選任されることがあります。従って、民事再生法では、管財人の選任は例外といえます。
管財人で最もよく知られているものに、破産手続きによる破産管財人があります。これは企業や個人が倒産した場合に倒産者に代わって残余財産を把握し、確保した財産を換金し、破産債権者に対して一定の順序に従い配当しながら清算を進めていきます。従って、破産管財人は、裁判所により選任される必置の機関といえます。
いずれかの当事者がこうした事態に陥った場合には、他方当事者が契約を解除するのは当然のことですね。