including, but not limited toやincluding without limitationは、英文契約書ではおなじみの表現です。「など」という訳をあてます。英文契約書の解説書の中には、「~を含むが、これに限定されるものではない」という訳をあてているものもあります。間違いではありませんが、このような表現が法令等で使われることはなく、簡潔に「など」または「などを含む」と表現されています。日本語の「など」という言葉に「~を含むが、これに限定されるものではない」という意味が既に含まれているのです。また、この表現の特徴は、例示列挙であるという点にあります。単純にA, B and Cと列挙するだけでは制限列挙と解釈されます。つまり、A、BおよびCのみを例に挙げているということです。これに対し、including, but not limited to A, B and Cとすれば、A、B、Cは例であり、他にも類似のものが含まれることを明確に示すことになります。
他にも例示列挙の表現として、A, B and any other productsといった表現があります。この場合、any other productsはその他すべての製品を指すのではなく、AやBと同種のもののみが含まれるものと解釈されます。これを英米法では「同種文言の原則(ejusdem generis)」といっています。不可抗力条項によくみられる「その他当事者の支配を越える事由」という表現も実際にはあらゆる事由が含まれるわけではなく、列挙されている不可抗力事由と同種のものしか含まれません。たとえば、不可抗力事由として天災等(地震、洪水)を列挙している場合には、「その他当事者の支配を越える事由」には台風などの自然災害は含まれますが、法令の改変、規制の制定やストライキなどは含まれないことになります。簡単な表現にも意外と深い意味があるものですね。
(執筆:吉野弘人)