法律用語の背景

英文契約書の翻訳で重要なポイントの一つは、法律用語を正確に訳すことです。一般の辞書にも訳語として法律用語が掲載されていますし、法律・契約関係の英和辞典も出ているので、これらの辞書から法律用語を訳出することはできます。しかし、正しく法律用語を使いこなすにはその用語の意味や背景についてもしっかりと知識を得ておく必要があります。

たとえば、債務不履行に関する条項には、破産に関する手続がよく出てきます。破産は、まず債務者自ら、または第三者が「申し立て」ます。裁判所は、審理を行い、破産を「宣告」し、管財人を「選任」します。こういった流れをしっかり理解して、「申し立てる」「申立て」「宣告」「選任」といった用語が正しく使えるかどうかが重要なポイントとなります。英文契約書の中で意味としては理解していながら、それぞれの単語を「申請」「宣言」「指名」と訳してしまうと、手続の背景を理解していないことがすぐに明らかになってしまいます。

これらの用語を正しく訳せるようにするには、一つ一つの用語を深く掘り下げて調べることが必要です。英米法辞典や法律用語辞典などを使って訳文の裏づけをしっかりと取りましょう。一つの用語から派生させて、関連した別の用語へと知識を広げたり、六法全書から関連する法令を調べたりすることも背景知識を得る上で有効な方法です。

また、しっかりとした法律知識を得るためには法律関連の資格にチャレンジすることもお勧めします。東京商工会議所が主催している「ビジネス実務法務検定試験」は幅広い法律知識を得る上では格好の資格です。こういった資格への挑戦は、一見遠回りをしているように感じるかもしれませんが、長い目でみると皆さんの契約書翻訳の実力アップにきっとつながるはずです。何事も基礎を固めるには時間がかかるものです。もし伸び悩んでいると感じる方は一度検討してみてはいかがでしょう!?
(執筆:吉野弘人)