今回は、即時性に関する表現について説明します。和文の契約書の中では、即時性に関する表現として「直ちに」「遅滞なく」「速やかに」という表現が使われます。「直ちに」は、3つの中でも最も即時性が要求され、一切の遅延を許さないという意味があります。また「遅滞なく」は、「合理的な期間内に」という意味で、「直ちに」よりは時間的な猶予が与えられていますが、合理的な期間を過ぎて遅延してはならないという義務の意味も含まれています。「速やかに」は、「できるだけ早く」という意味で3つの中では最も要求が緩やかであるといえます。この場合、迅速に処理することは、いわば努力目標であり、義務は伴わないとされています。
では、これらに対応する英語の表現を見てみましょう。英文契約書でのimmediatelyとforthwithは「直ちに」「速やかに」にあたります。promptlyは「直ちに」という意味と「速やかに」「遅滞なく」という意味があり、文脈に応じて訳語を選択する必要があります。without delayはそのまま「遅滞なく」と訳してしまいがちですが、「直ちに」と「遅滞なく」の両方の意味があり、一義的には「直ちに」という意味になります。これは、Black’s Law Dictionaryにも説明があり、同書ではwithout delayの意味として、第一にInstantly、at onceであるとしています。「遅滞なく」という英語表現には、without undue delay、within reasonable timeがあてられることが多いようです。また、「速やかに」に対応する英語表現はas soon as possibleです。
即時性に関する表現は、場合によっては契約条件にも関わってくる重要な表現です。必ずしも、日本語表現と英語表現が1対1で対応しているわけではなく、また、混乱しやすい点もありますので、しっかりと整理しておいてください。
(執筆:吉野弘人)